第42章

高橋遙がまだ返事をする前に、彼女は既に彼の膝の上に引き寄せられていた。

座った瞬間、稲垣栄作は低く唸った。傷ついた靭帯を引っ張ってしまったのだろう。

高橋遙は小声で言った。「降りるほうが」

細い腰が抱き寄せられ、二人の距離が縮まる。稲垣栄作の純粋な男性の匂いが、絹糸のように彼女の顔を包み込み、その魅惑的な温もりが微かに感じられた。

彼は顔を下げて彼女の様子を見つめた。

ゆったりとした病院着を着て男性の膝に座り、細く白い脚が男性の濃色のスーツの生地の上に置かれている光景には、言い表せない禁断の感覚があった。まるで男と密会しているかのように。

稲垣栄作の声はより一層かすれた。「膝の上...

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